2014年4月19日土曜日

イオンの「格安スマホ」が成功した理由を考える


今月4日に販売開始となった「イオンのスマートフォン」を皮切りに、いわゆる「格安スマホ」に参入する動きが相次いでいる。
昨日はビックカメラが実際に販売を開始し、それに続いてヨドバシカメラ、ノジマ、エディオンも販売予定と報道された。これら量販店とは異なるが、関西の通信事業者ケイ・オプティコムも、格安スマホの販売を検討しているとのこと。

もちあるいてなんぼ。: Nexus4+b-mobileで月額2980円!「イオンのスマートフォン」4月開始予定
もちあるいてなんぼ。: 【更新】auのMVNOで「格安スマホ」誕生か?
もちあるいてなんぼ。: 【更新】ビックカメラも「格安スマホ」参入へ

この1週間で次々と新たな「格安スマホ」が名乗りを上げた訳だが、これを最初に世に送り出したイオンの功績は大きいと思う。
以前も書いたが、イオンの携帯電話売り場では、元々SIMパッケージもSIMフリー端末も販売していた。それを今回セットにして「イオンのスマートフォン」と銘打って発売しただけで、これまでにないほど大きな話題となった。

最初は、私もただ単に「イオンという看板の大きさで話題になった」のだと思っていた。
しかし、イオンの売り出し方を細かく見ていくと、理由はそれだけではないのだなと思えてきた。
その理由を3つ挙げてみる。


1. 音声通話対応にしたこと


これまでのいわゆる「格安SIM」はデータ通信専用のものが主流で、090/080番号が使える音声通話対応のものは少なかった。しかし、「データ通信専用ではなく音声通話も使えるものが欲しい」という声はやはり大きい。
先日総務省が発表した「MVNOサービス利用動向」調査結果によると、

総務省|MVNOサービスの利用動向に関するデータの公表(平成25年12月末時点)より引用:
MVNOを認知していて、利用意向のある回答者の中で、「音声・データ共に利用したい」が61%で最多。

「データのみ利用したい」が26%で、これの倍以上の数字となっているのだ。
これはビッグローブの例だが、実際こんな話もあった。

ビッグローブ事業方針説明会、「3~5年後の上場を目指す」古関社長 -INTERNET Watchより引用:
店頭で「通話はIP電話を使うことになり、050番号を使っていただくことになる。これまで使っていた携帯電話の番号は利用できない」と聞くと購入を止める人が多い

私などは、好きで2台持ちをやっているのだが(『私がPHSとスマートフォンを2台持ちする理由』参照)、やっぱりスマホ1台で全て済ませたいというのが一般的な考えなのだろう。

「イオンのスマートフォン」を販売するに当たり、音声通話対応ではなくデータ通信専用にすれば、月額料金はもっと安くなったはずだ。それをあえてしなかったのは、「通話もできるスマホでなければ売れない」という意見が多かったのだろう。


2. 店頭販売にしたこと


「イオンのスマートフォン」は、主にシニア層によく売れているという。

ビック、ヨドバシも「格安スマホ」 シニア層狙い流通続々参入 (2/2ページ) - SankeiBiz(サンケイビズ)より引用:
発売から2週間で販売台数は6000台を超え、今月中には売り切れる見通しだ。特にシニア層からの人気が高く、「アクティブシニアが、半数以上」(コーポレートコミュニケーション部)という。

日本通信三田社長も同様のことをツイートしている。
どちらかというと「家計の厳しいファミリー層が通信費節約のために購入する」というイメージがあったのだが、蓋を開けてみるとシニア層がメインだった。

イオンは実店舗だけでなく、オンラインショップもいくつか運営している(その内のひとつ「イオンショップ」で、実際にIIJmioのSIMパッケージも販売している)が、もし今回の「イオンのスマートフォン」がオンライン限定販売だったら、シニア層の多くは購入しなかったのではだろうか。
やはり、「実店舗で」「対面で」販売することの安心感は大きいと思う。


3. 端末代を24回分割払いにしたこと


先ほども書いたとおり、元々イオンの店頭ではSIMフリー端末も販売している。例えばNexus4は39800円だった。
これを24回分割払いにして、回線の月額料金を足した「2980円」という数字を前面に押し出したことが、今回「イオンのスマートフォン」が売れた大きな理由だと思う。

「端末一括39800円+月額料金1560円」では、他の大手キャリアと料金の比較が出来ず、どこがお得なのかよく分からない。
端末代を2年間分割払いにすることで、大手キャリアと同じレベルで料金比較ができる。
そして、その大手の月額料金を「おおよそ6000円から7000円」とした上で、「こっちは2980円ですよ」とアピールしたのが上手い。
また、月額2980円にするために、Nexus4を34080円に値下げもしている。
この辺はやはり、流通大手だけに「どうやったら他より安く見えるか」というのを徹底的に研究したのだと思う。

日刊ゲンダイ|月額たった2980円 イオンの「格安スマホ」は売り切れ必至より引用:
イオンは、店舗内の端末売り場で、スマホユーザーのニーズを徹底的に聞いたといいます。その多くが、<機能は最低限でいいから安いものを>だったのです


と、ここまで3つの理由を挙げてみた。
今回のイオンの成功を見て、追随する他社も同じような売り方をしてくると思う。
ただ、今後もずっと「格安スマホ」を売り続けていくためには、考えないといけないことがいくつかある。その一つが「アフターサービスをどうするか」だ。

上で書いたとおり、イオンのスマホはシニア層によく売れた。きっと購入した人達は「何かあったら購入した店舗に持って行けばいい」と考えていると思う。
たぶん、イオン店頭でも「端末の故障ならメーカーへ、回線の問題なら通信事業者へ」という案内はしてくれると思うが、そこから先はユーザが自分で問い合わせなければいけない。
それ以前に、スマホの基本的な使い方に関する質問(例えば「LINEってどうやったら使えるの?」とか) は、どこがサポートしてくれるだろうか。
これまでのドコモMVNOユーザであれば、基本的に自分で何でも調べて解決していたと思うが、この先はそうはいかないことも多いだろう。

もっと困るのは、何かの理由でスマホが使えなくなった時の対応だ。
大手キャリアのショップであれば、修理の間は代替機を貸してくれるだろうが、「格安スマホ」にそういったサービスは無いはず。有料でも代替機を貸し出すサービスがないと、そのうち困る人がかなり出てきそうだ。

「格安スマホ」は、確かにこの先も伸びしろが大きいと思う。
だからこそ、アフターサービスの問題については、メーカー・通信事業者・販売店の三者が協力して解決していってほしいと願う。